世界初!インプラントが海を渡る!ドローン研究者・野波氏が描く未来

ドローンニュース

2021年6月、大都市圏では国内初となるドローンの「レベル3(目視外補助者なし)」での飛行成功のニュースは、大きくメディアでも取り上げられました。
約50Kmという長距離と、横浜市ー千葉市の2大政令指定都市間の飛行成功、ドローンが物流業界の新たな担い手として実用化目前であることを証明するニュースでした。
今回はこの実証実験を主導された先端ロボティクス財団理事長であり、日本のドローン研究における第一人者でもある野波健蔵(のなみ けんぞう)氏にお話を伺いました!
ドローンで東京湾50キロ横断 横浜・千葉間、荷物運ぶ実証実験

大都市圏国内初!ドローンによる「レベル3」飛行の成功

▲一般財団法人先端ロボティクス財団理事長 野波健蔵氏(野原氏提供)

世界初!ドローンがインプラント(歯科技工物)を運ぶ!実用化後のビジネスモデル

野波氏———
今回の実験では千葉市内で作られた歯科技工物を横浜市内にある歯科医院へ輸送することを想定し、実際にインプラントを積んで縦断しました。3Dプリンターで作製された「歯」ですね。
インプラントをドローンで運んだのはこれがおそらく世界初じゃないですかね(笑)。

今はこれを海浜幕張にある会社で作り、首都圏にある歯科医院までアタッシュケースに入れて車で運んでいます。
湾岸道路やアクアラインは渋滞もあり配達するだけで一日仕事で、一日一往復が限界というのが現状です。
インプラント自体は1本50g程度と小さなものなのに、運ぶ手段がエコじゃないですよね(笑)。
荷物がものすごく軽いことはドローンにとって好都合です。
また歯は1本あたり100万円と高価なものなので、完成品の納品だけじゃなく、
「模型の時点でフィッティングして調整するなど一日のうちで往来も出来たらなお良い」
という話が今回の実験前から描いていたビジネスモデルです。

ものすごく軽く、かつ高価なインプラントがドローンとの相性がいいです。
対重量当たりの付加価値が高いものはドローンで運ぶには適してると言えるでしょう。

▲横浜市ー千葉市間の約50㎞を「レベル3」飛行に成功したカイト型ドローン(野原氏提供)

東京湾縦断成功が意味するもの、ドローンによる長距離輸送を実現

野波氏———
今回の実験成功で物流におけるドローン利用が加速することは間違いありません。
インプラントをドローンで運びたい、という話自体は2015年にはありました。
ただ、最初にその話を聞いた時はドローンで東京湾を渡るのはまず無理だと判断しました。
50㎞という距離は長過ぎる、と。
それから4年を経た2019年、「これはそろそろ出来るな」と思い、今回の縦断実験を計画し2021年6月21日に実験するに至りました。

現在、10㎞程度の飛行が可能なドローンはたくさんありますが、50㎞を飛べるドローンとなるとそうないんですね。
今回の成功を受け、次は100㎞を目指しています。
100㎞と言えば小田原から伊豆大島や伊豆七島を全てドローンが網羅できる距離。
現在の輸送手段は船のみですが、ドローンが時速120~130㎞で運べたら急ぎの物などとっても便利になるんじゃないかと!

実際、アメリカのカリフォルニアやノースカロライナでは命と健康に関わるものとして、血液や検体などをドローンが運んでいます。
ドローンを活用することで必要な物資が早く届けられたり、すぐに検査して結果を伝えることができるようになっています。
現在は世界の多くで実用化されており、日本も今回の実験成功を受け間もなく実現することでしょう。

今後は垂直離発着が可能で、速度が今の3倍、横浜市ー千葉市間を約20~30分で移動出来るようなドローンの開発に取り組んでいます。
トラックや鉄道といった陸路の輸送に加え、低空を飛行するドローン物流が2023年春ごろには実現できるでしょう。

 

ドローンが担う次世代の物流業界

今回の実験成功でさらに注目を集める「ドローン物流」。
次世代の物流網として約1年半後には実用化が期待されます。
野波氏が見据える『ドローンが当たり前に存在する日常』とは?

インフラの新規整備&メンテナンスが不要

野波氏———
ドローン物流は「インフラ整備が不要」というのも大きなメリットです。
橋を架ける必要がないので、時間もコストもかからない上に設備のメンテナンスも不要、老朽化の心配もありません。
ドローンさえあれば実現可能なのです。
東京湾は世界トップレベルの過密エリアで、羽田国際空港を離発着する飛行機、横浜港や千葉港、竹芝桟橋から発着する船は常時500隻とも言われています。
そのうえ、京葉・京浜工業地帯や発電所なども集まり工業地帯として発達しています。
住宅地上空のドローン輸送は落下物の危険性や騒音問題など不安視されていますが、 今回のように海の上を飛ぶ場合はそのほとんどを回避することができるため、実現しやすいと考えています。

災害時こそ活きるドローンによる空路での物流

野波氏———
今年に入って熱海で大きな災害がありましたが、災害時こそドローンが必要とされるでしょう。
陸路は必ずと言っていいほど寸断されるので、頼れるのはやっぱり空だと。
千葉での大規模な水害や2011年の東北大震災の津波被害の時も、陸路には限界があると感じました。
ドローン物流が日常的に利用されている状況で、災害が発生した時はそれを緊急輸送用に切り替えることが出来ると想定しています。
世界中の自然災害の10%が日本に集中している災害大国だからこそ、日本がレスキュー隊として海外に派遣されたときにドローンと共に活躍することが出来る!と思うのです。

超高齢社会における労働力不足を自動ロボットで解決!

野波氏———
ドローンが登場し、2014~15年ころから「空の産業革命」と言われていますが、現状はほとんど人の目に触れない山奥や橋の下、石油プラントの点検など一部の人に限定されています。
「産業革命」と言うならば、クロネコさん(クロネコヤマト)や佐川さん(佐川急便)が台車を押して荷物を運んでいる風景と同じくらいドローンやロボットが荷物を運んでいるのが当たり前になることだと思っていて、それも4~5年後には実現可能だろうと。
物流業界は約30兆円規模の産業で、そのほとんどを人力で担っています。
現在は配送業の方々が暑い中重い荷物を運んで回ってくれていますが、超高齢社会が進み、老齢化による働き手不足を今後はドローンと小型ロボットで代用する、ロボット技術で補うのです。

今でも離島山間部、山奥の過疎地などで人に見えないところでドローン配送をやっているところはありますが、そもそも人が少ないためビジネスにはなりません。
大都市周辺でやることに意味があるのです。
そういう意味で今回の横浜市ー千葉市間の飛行実験は一番理にかなっていて、日本が技術大国であることを世界にも示せる機会になりました。

 

ドローン研究の第一人者・野波氏のルーツとは?

ここまで熱くドローン研究に対する思いを語って下さった野波氏。
現在ではドローン研究の第一人者として知られている野波氏ですが、そんな野波氏とドローンとの出会いを聞いてみると意外な?!答えが返ってきました!
ドローン研究を始めてから現在に至るまでの野波氏の研究の原動力とは?

出会いは偶然で必然!NASAでの出会い

野波氏———
1985年NASAで研究員をしていた時、隣のグループが研究している有人ヘリコプターをコンピューターで操縦支援制御するする技術実験をよく見に行ってました。
いつもそのチームの人に話を聞いていて、自分の研究よりこっちの方が面白いなと思っていたので「よし、日本に帰ったらこれをテーマにして研究しよう!」と(笑)。
点と点が線になり、面になる、出向いた先の新しい出会いや発見、アイディアがキッカケで何かにつながる、なんてことも全て偶然で面白いですよね。
後から考えたら、NASAに行ってなかったらドローンを始めてなかったので必然とも言えますが、結局は偶然が形になったんです。
あの時、ドキドキしながらコンピュータ制御のヘリコプターに乗せてもらい、想像してた以上に安定感がある飛行に「これはスゴイな!」と感動したのがキッカケになって、これを自分でも実現したいと考えるようになりました。

▲1985年NASA研究員時代の野波氏(野原氏提供)

ドローン研究の第一歩は秋葉原で購入したラジコンヘリコプター

野波氏———
NASAから日本に戻り、いざ研究をするぞ!となっても、NASAのような何億円もするヘリコプターは用意できません。
なので最初はエンジンヘリのついた競技用ヘリコプターを秋葉原で購入し、まずはその操縦から学び始めました。
学生と一緒になって練習し、半年後やっと操縦が出来るようになったら、今度はその操縦をコンピュータ制御でやるぞ!と。
研究には約3年を費やしました。
卒業した学生が遊びに来て「君の操縦をコンピュータが超えたよ」と披露したこともありました。
そして、忘れもしない2001年8月1日の暑い日に日本初のコンピュータ制御によるヘリコプター操縦に成功しました!
離陸し上昇、上空でホバリングした後、円を描き、そして着陸。
その時の感動は忘れられません。
研究中はトンネルの中にいるような苦しみでしたが、その苦労が一気に吹き飛んだ瞬間でした。

原動力になった『感動』、『感動』が豊かな人生をつくる

野波氏の人生の節目となった瞬間には必ず『感動』がありました。
『感動』こそ研究人生のモチベーションと語る野波氏から読者の皆様にもメッセージを頂きました!

野波氏———
『感動』が全てのモチベーションになっています。
東京オリンピックも開催されましたが、選手たち自身も本人がまず『感動』しているんだと思います。
オリンピックのような大舞台でプレッシャーもありながら、自分が自分ではない自分を超越していくような、一種のアドレナリンが出ていて自己変革が起きているんじゃないかと。
研究でもスポーツでも、根詰めてやってきたものが、ある時一瞬にして繋がり成果になる。
その『感動』があるから今まで続けているんだと思います。
その『感動』経験を味わったからこそ、それがまた次のモチベーションにもなるのです。

ドローン自体は楽しいので、趣味でも仕事でも、どちらでも楽しんでもらったらいいと思います。
あくまでドローンは手段の一つで、自分の夢を実現する、自己実現していく女性のチームになるといいですね。
自己実現して、人生を楽しく、豊かにしていくために集まった先に、ドローンがいずれ宇宙旅行や空飛ぶ車に代わってもいいと思うんです。
ジェフ・ベゾス氏は所要時間10分、宇宙空間滞在は3分、という宇宙飛行に成功しましたが、これも「丸い地球を見る」その『感動』のために何年も準備して臨んだのです。
一つの想いを実現するためなら、何十年かけてもいい、人生をかけてもいいと私は思うんです。
その想いが実現した時の、身震いして震えが止まらないくらいの「人生のときめき」、この『感動』をドローンジョプラスのみなさんはもちろん多くの若い人には味わって頂きたいですね。

 

まとめ

常に先を見据えて「次はこんなことを実現したい!」と話す野波氏は、探求心と先見性、行動力を持ち合わせた研究者であり経営者なんだと感じられました。
困難や苦悩のない研究活動などないと思いますが、その苦労を上回る未来に対する期待感に溢れていました。
そして何より、人生をかけて『感動』を追い求めドローン研究に現在まで打ち込んでいらっしゃることが、どんな質問にも真摯ににこやかにお応え頂く姿からひしひしと伝わってきました。

最後には「ドローンジョプラスの皆さんと一緒に何か実現出来たら面白いね!具体的には再来年、2023年くらいかな~。」という話も!!
冒頭から終始ワクワクしっぱなしのインタビューで、これからさらに楽しみになるお話が満載でした。
今後ドローンが物流業界に始まり、日常生活の中へ活躍の幅を広げていくことは間違いないと確信する時間でした。
野波氏の研究がドローンの技術の更なる発展を牽引し続けて下さっているように、ドローンジョプラスではこれからもドローンの魅力を多くの人に届けるべく発信し続けます!

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